アイランド〜愛乱れる土地(成田市演劇祭2024Ver.) <第1場:大事なものは全てパンツへ> ※舞台中央には島。大きいのと小さいのが並んで座っている。大きいののやや後方に、赤いラジオ。大きいのはオレンジの帽子をかぶり、顔には丸メガネ、肩にラジオ。小さいのは赤い帽子にファンシーなサングラスをつけている。 大:うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!ひろいなぁー、ひろいなぁ!おっきいなぁ!この野郎!! 小:それは、小さな小さな島でした。島、と言うにはあまりに小さい、小さすぎる、人ひとりが座るのが精一杯の、ささやかな、足場のようなものでした 大:ねぇアイちゃん。今何時だい? ラ:ただ今の時刻は午後2時15分です。今日もよい一日を! 大:今日もよい一日を!うん、うんうん、ほんとにいい一日だといいよね!いい一日は、いいね! ※波の音 大:うーみーは、ひろいーな、おっきーいなぁー…んん!隊長、2時の方向に何やら漂流物!…(指で方向を確認し)嘘です!10時の方向に漂流物発見!確保します! ♪:後ろから前から 大:(バランスをとりながら立ち上がり)アイちゃん、ちょーっとアンテナ使うね! ラ:後ろから前から、どうぞ。後ろから前から、どうぞ…(回りながら踊る) ※大きいの、ラジオのアンテナを引き抜き、流れてくるものをこちらへ寄せる。 大:よしよし、何が出るかな?何が出るかな?ふんふんふんふん…パンツだぁ!アイちゃん、見てよ!パンツが流れてきたよ! ラ:パンツには二つの意味があります。一つ目は、ズボン。二つ目は短い下穿きです 大:パンツ!大事だもんなぁ、パンツ!これがあれば宝物をしまえるもんなぁ。大事なものはすべてパンツへ… ※暗転。 <第2場:サンタフェ> ※小さいの、パンツを履いて座っている。大きいの、アンテナを持ちバランスをとりながら漂流物を引き寄せている。 大:なになに、お、本か。こいつは…ああー、これはーははぁ… 小:ねぇ 大:えっ 小:ねぇ、それ、どんな本 大:どんなって…サンタフェ?(本の中を見る)だめだ、アイちゃんには見せらんないな(小さいのから遠ざかり) ラ:サンタフェは、アメリカ合衆国ニューメキシコ州の州都。また、そこで撮影された宮沢りえのヌード写真集です 大:芸術かーわいせつかーってやつよ。サンタフェっていうから、クリスマスの本かと思ったんだけども。なんか、まぁ、宗教ってやつの本だわ。(本を流す)いい人に拾われるんだぞ(舞台中央へ戻る) ※島が軋む音。 大:お…ととと。アイちゃん、しっかりつかまって! ラ:気をしっかり持ってください 大:……(ラジオを見る) 小:もう、いやだ!なんで揺れるの?なんで、つかまってなきゃいけないの? 大:だって、島だもの!つかまってなきゃ落っこちちゃうでしょ? 小:シマってなに! 大:えっ!島ってのは、その…アイちゃん、島ってなに? ラ:シマとは、周囲が水で囲まれている陸地を指します 大:そうそう! ラ:また、ある仲間内の勢力範囲という意味があります 大:えっ!どういうこと?? ラ:おうおう、威勢がええのう!けどなぁ、よその組のシマに手ェ出したらしまいじゃ、きっちり落とし前つけてもらうけぇノォ!! 大:アイちゃん!? ラ:どちらのシマも、はみ出したら、沈められます。 小:沈められちゃうの!? ラ:お後がよろしいようで 大:沈めないよ!いや、沈まないように、しっかりつかまっているんだよ。俺も、しっかり捕まえてるから大丈夫だから 小:大丈夫? 大:そう、大丈夫!だから、今日も安心して眠って!アイちゃん、おやすみ! ラ:ただ今の時刻は午後8時55分です。おやすみなさい ※ラジオ、「二人のアイランド」の間奏を弾く。 暗転。波の音。大きいのにスポット。 大:眠った?アイちゃん、眠ったかしら? ラ:ただ今の時刻は午前2時です。草木も眠る、丑三つ時です 小:…… 大:よしよし、じゃあ今夜もアレ頼むよ、アイちゃん ラ:ちょっとだけ、ですよ。アンタも好きネ ♪後ろから前から ※:大きいのがラジオの手を取り、小さいのから離れ舞台上手後方へ。 幕が引かれ怪しい雰囲気に。踊るラジオと大きいのの影。 大:アイちゃん!アイちゃーん!! ラ:ちょっと、長すぎますね 大:そんな!もう一回!もう一回だけ!! ラ:その機能には対応していません 大:アイちゃん!あいちゃーん!! ※小さいの、ラジオと大きいのを見る。音楽が大きくなり、暗転。 <第3場:主に腰を振っています> ※大きいの、立っている。小さいの、座っている。 ♪:夢の中へ 大:ねぇアイちゃん。今何時だい? ラ:ただ今の時刻は午前8時45分です。いってらっしゃい! 大:いってらっしゃいったって、この島から出らんないのにどこいきゃいいのよ、え、アイちゃん(欠伸) ラ:とても、眠たそうですね 小:すごく、眠そう 大:ちょっとねー、昨晩はねー、頑張りすぎちゃったかしら…ねー。アイちゃん、眠気覚ましにラジオ付けてよ。いつもの、右22度、左38度 ラ:ラジオのスイッチを、オンにします。(乳首のダイヤルをひねり)あ~ん、ああ〜ん ※音楽、大きくなり 大:…… 小:…眠った?眠って、るよね? ラ:うふっふーうふっふー 小:…アイちゃん、止めて ※音楽が止まる。 小:アイちゃん、昨晩のことだけど。ううん、毎晩毎晩、私が寝た後のことなんだけど…あの人、いったい何をやっているの? ラ:質問の意味が分かりません 小:毎日午前2時に、あの人、何をやっているの? ラ:こんな答えが見つかりました。主に、私に向かって、腰を振っています ※暗転。音楽が再び大きくなりFO。 <第4場:ぜんぜん埋まらない> 大:ねぇアイちゃん。今何時だい? ※大きいのにスポット。 ラ:…… 大:アイちゃん?…(あたりを見回すが、誰もいない)そうかーこれ夢だわ。俺、夢の中にいってきますしちゃってるんだわ(一歩、島から踏み出し、そのまま歩き回る) 夢だもの!なんだってできるんだもの!どこにだっていけるんだもの! 水上歩行!…安心しなさい。わたしだ。恐れることはない!(じっと島の方を見つめる) 大:小さな小さなこの島は、俺たちを乗せるので精一杯だ。なんとか島を広げようと、いろんなものを海に沈めてみた。だけど、ぜんぜん、埋まらない。大きな海に、ぽちゃんぽちゃんと沈むばかりだ。このままじゃ、いずれ重くなる。重くて、沈んでしまう。 俺は一度だけ、海に落ちたことがある。あの時は、このまま沈むんだと思った。この海ってやつは、とんでもなく深いんだ。ずっとずっと下の方は、そうだこんなふうに暗くて何も見えやしない。俺、泳げないからさ、っていうか泳いだことないからさ、海の中で、ああ、もうだめだぁって思った。そしたらさ、見たんだよ。 そこには、でっかい顔があった。どんだけでかいかって、顔のでかさが(手を広げる)。そいつは、頭に、これまたでっかいたんこぶがあった。俺は、俺が島だと思ってたのは、そいつのたんこぶだったんだ。 なんか、そいつの頭…この島には、周りにブツブツした石みたいなのがたくさんあってさ、俺はもがいて、もがいて、なんとかそのブツブツに手をかけた、必死でつかまった。ああ、これで、助かったって、まだ沈まないで済むって ※大きいの、流れてきたものを拾う。 大:成田高等学校付属中学校、旅のしおり… ラ:…修学旅行2日目。11月2日、午前8:30 旅館出発 バスにて東大寺へ。奈良の大仏を見る。法華堂を見学後、昼食まで自由時間… 大:ああっ!俺こいつ、知ってる!ブツブツの頭の、でかい、確か、奈良の大仏ってんだ!大仏ってのはよくわかんないけど、多分、でかいブツブツって意味だろ。だから、多分こいつは、デカいブツブツがついた、奈良って名前のやつなんだな。俺たちは、奈良、に乗ってたんだ! ♪:【奈良に乗って】 海に浮かぶ島 日が暮れてディスコナイト 寄せては返す夢や希望は、ごめんね(ソーリー)、全部は乗せられない ずいぶんと重くなったから 私じゃもう持ちきれない だ・か・ら 奈良に乗っていこう 大きなブツブツ 気のいいあいつ GO GO 大乗仏教 大丈夫教 大丈夫今日 ら・ら・ら 海に浮かぶ島 日が昇ってパーリタイム 浮かんで沈む夢や希望は、サンキュー(ありがと)、全部を君にあげる ずいぶんと重くなったから 私の分も君が運んで だ・か・ら 奈良に乗っていこう 大きなブツブツ 気のいいあいつ GO GO 大乗仏教 大丈夫教 大丈夫今日 ら・ら・ら <第5場:こんにちは、さようなら> ※小さいのと大きいの、立っている。 小:何か流れてきた 大:……(眠るように項垂れている) 小:ねえ!何か流れてきた!! 大:え?何?どこ? 小:何か流れてきた!アンテナ貸して! 大:アイちゃん?何、何見えない ラ:(小さいのにアンテナを抜かれて)ああーん! ※小さいの、アンテナを使って流れてくるものをこちらへ寄せ、中を覗く。 小:何、これ ※大きいの、立ち上がり中を覗きそれをゆっくりと撫でる。 大:そうか、ここまで会いに来てくれたんだな。ありがとう。アイちゃん、送ってあげよう ※大きいの、モーツァルトの子守唄を歌う。流れてきたそれを、再び流し見送る。暗転。 <第6場:随分と重くなった> ※小さいのと大きいの、立っている。大きいのはアンテナにしがみついている。 小:うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!ひろいなぁー、ひろいなぁ!おっきいなぁ! 大:それは、小さな小さな島でした。島、と言うにはあまりに小さい、小さすぎる、人ひとりが座るのが精一杯の、ささやかな、足場のようなものでした 小:ねぇアイちゃん。今何時? ラ:ただ今の時刻は午後2時15分です。今日もよい一日を! 小:今日もよい一日を!うん、うんうん、ほんとにいい一日だといいよね!いい一日は、いいね! ※波の音 小:あーあ、何か流れてこないかなぁ。何か…そう、びっくりするほど、素敵なもの、流れてこないかなぁ ※島が軋む音。 大:お…ととと。アイちゃん、しっかりつかまってる? ラ:木を、しっかり持ってください 大:大丈夫!まだ、大丈夫!! 小:なんで、つかまってなきゃいけないの? 大:つかまってなきゃ落っこちちゃうでしょ? 小:落っこちちゃったら、どうなるの? 大:どうかなぁ…沈んじゃうのかなぁ 小:それだけ? 大:うん、それだけ。ね、アイちゃん! ラ:沈む、には、いくつかの意味があります。水面上にあったものが水中に没する。 太陽・月などが、地平線・水平線より下へ移動する。暗い気持ちになる、落ち込む 小:…沈んじゃうの? 大:沈まないよ!いや、沈まないように、しっかりつかまっているんだよ。俺が、しっかり捕まえてるから大丈夫だから 小:大丈夫? 大:そう、大丈夫!だから、今日も安心して眠って!アイちゃん、おやすみ! ラ:ただ今の時刻は午後9時55分です。おやすみなさい ※ラジオ、「二人のアイランド」の間奏を弾く。 舞台が暗くなり、大きいのだけに明かりが残る。 大:眠った?アイちゃん、眠ったかしら? …一度だけ見た、奈良の顔、優しいような、厳しいような、誰かを乗せて、支えてやるさって覚悟、みたいな。そうさ、俺が支えてやるよ。うん、任しとけ! ※大きいの、羽ばたく。♪「かもめが飛んだ日」ゆっくりと暗転。水音。 <第7場:アイちゃん> ※島に、小さかったものだけが座っている。 オレンジの帽子が流れてくる。帽子を取ると、中には赤いラジオ。帽子をかぶり、ラジオをそっと抱き抱える。次第にあやすような動きへ。 小:よし、よし…小さいね、小さい… きっと、まだ見えないよね。でも大丈夫、私が見てるから。まだ言葉、わからないよね。でも大丈夫、私がたくさん、たくさん話しかけるから。まだ立つことも座ることもできないあなたが、落っこちないように、私がしっかりつかまえておくから、大丈夫、大丈夫(ラジオを肩に載せる) ありがとう…私のところに来てくれて、私のところに居てくれて、ありがとう なぜ、私の目が開いたとき、あなたの目は見えないのか。私が言葉を覚えたとき、あなたの耳は聞こえない。私が自分を知ったとき、あなたは自分が誰かも分からない。私が手を伸ばすとき、あなたにはもう、触れられない 私たちは、何をしているのか、自分じゃわからない そうだ、名前…うーん、名前って、私ほかに知らなくて…アイ、ちゃん?アイちゃん、うん、アイちゃん、アイちゃん!(名を呼びながら、あやす) ラ:…… 小:アイちゃん? ラ:…… 小:アイちゃん!何か話して、ねぇ、アイちゃん!! ラ:アイちゃんに、2918件のメッセージがあります 小:アイちゃん?…アイちゃんは、あなたでしょう? ラ:私はアイちゃんですAIのアイちゃんです。あなたも、アイちゃんです 小:……!!! ♪:【ふたりの愛ランド】 ※上手から大きいの登場。 大:アイちゃーん!! あのね、今日はアイちゃんに、歌を聞いてもらいたいと思って!たくさん練習しました!聞いてください!!「ふたりの愛ランド」(歌いながら、ラジオと腰振りダンス) (1:43からセリフ) おはよう、アイちゃん!今日もいい日かな?いい日は、いいね! おやすみ、アイちゃん!いい夢を! アイちゃん、今日はご機嫌ななめ?え、恋人と喧嘩した?まぁ少し冷静になろうよ、怒ってる時って、ろくでもないことしか考えないのよ。そうだ!そんな時は海に向かって叫ぶといいよ! 寂しくないよ、寂しくないアイちゃんは、寂しくない (2:24から歌い出す) ラ:メッセージが長すぎたため、ここで録音を終了しています。メモリを初期化しますか? 小:ううん、まだ、消さないで。私の声を残す時まで ※波の音。 うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!ひろいなぁー、ひろいなぁ!おっきいなぁ! ラ:それは、小さな小さな島でした。島、と言うにはあまりに小さい、小さすぎる、人ひとりが座るのが精一杯の、ささやかな、足場のようなものでした 小:ねぇアイちゃん。今何時? ラ:ただ今の時刻は午後2時15分です。今日もよい一日を! 小:今日もよい一日を!うん、うんうん、ほんとにいい一日だといいよね!いい一日は、いいね! ※波の音。
アイランド〜愛乱れる土地(成田市演劇祭2024Ver.)
<第1場:大事なものは全てパンツへ>
※舞台中央には島。大きいのと小さいのが並んで座っている。大きいののやや後方に、赤いラジオ。大きいのはオレンジの帽子をかぶり、顔には丸メガネ、肩にラジオ。小さいのは赤い帽子にファンシーなサングラスをつけている。
大:うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!ひろいなぁー、ひろいなぁ!おっきいなぁ!この野郎!!
小:それは、小さな小さな島でした。島、と言うにはあまりに小さい、小さすぎる、人ひとりが座るのが精一杯の、ささやかな、足場のようなものでした
大:ねぇアイちゃん。今何時だい?
ラ:ただ今の時刻は午後2時15分です。今日もよい一日を!
大:今日もよい一日を!うん、うんうん、ほんとにいい一日だといいよね!いい一日は、いいね!
※波の音
大:うーみーは、ひろいーな、おっきーいなぁー…んん!隊長、2時の方向に何やら漂流物!…(指で方向を確認し)嘘です!10時の方向に漂流物発見!確保します!
♪:後ろから前から
大:(バランスをとりながら立ち上がり)アイちゃん、ちょーっとアンテナ使うね!
ラ:後ろから前から、どうぞ。後ろから前から、どうぞ…(回りながら踊る)
※大きいの、ラジオのアンテナを引き抜き、流れてくるものをこちらへ寄せる。
大:よしよし、何が出るかな?何が出るかな?ふんふんふんふん…パンツだぁ!アイちゃん、見てよ!パンツが流れてきたよ!
ラ:パンツには二つの意味があります。一つ目は、ズボン。二つ目は短い下穿きです
大:パンツ!大事だもんなぁ、パンツ!これがあれば宝物をしまえるもんなぁ。大事なものはすべてパンツへ…
※暗転。
<第2場:サンタフェ>
※小さいの、パンツを履いて座っている。大きいの、アンテナを持ちバランスをとりながら漂流物を引き寄せている。
大:なになに、お、本か。こいつは…ああー、これはーははぁ…
小:ねぇ
大:えっ
小:ねぇ、それ、どんな本
大:どんなって…サンタフェ?(本の中を見る)だめだ、アイちゃんには見せらんないな(小さいのから遠ざかり)
ラ:サンタフェは、アメリカ合衆国ニューメキシコ州の州都。また、そこで撮影された宮沢りえのヌード写真集です
大:芸術かーわいせつかーってやつよ。サンタフェっていうから、クリスマスの本かと思ったんだけども。なんか、まぁ、宗教ってやつの本だわ。(本を流す)いい人に拾われるんだぞ(舞台中央へ戻る)
※島が軋む音。
大:お…ととと。アイちゃん、しっかりつかまって!
ラ:気をしっかり持ってください
大:……(ラジオを見る)
小:もう、いやだ!なんで揺れるの?なんで、つかまってなきゃいけないの?
大:だって、島だもの!つかまってなきゃ落っこちちゃうでしょ?
小:シマってなに!
大:えっ!島ってのは、その…アイちゃん、島ってなに?
ラ:シマとは、周囲が水で囲まれている陸地を指します
大:そうそう!
ラ:また、ある仲間内の勢力範囲という意味があります
大:えっ!どういうこと??
ラ:おうおう、威勢がええのう!けどなぁ、よその組のシマに手ェ出したらしまいじゃ、きっちり落とし前つけてもらうけぇノォ!!
大:アイちゃん!?
ラ:どちらのシマも、はみ出したら、沈められます。
小:沈められちゃうの!?
ラ:お後がよろしいようで
大:沈めないよ!いや、沈まないように、しっかりつかまっているんだよ。俺も、しっかり捕まえてるから大丈夫だから
小:大丈夫?
大:そう、大丈夫!だから、今日も安心して眠って!アイちゃん、おやすみ!
ラ:ただ今の時刻は午後8時55分です。おやすみなさい
※ラジオ、「二人のアイランド」の間奏を弾く。
暗転。波の音。大きいのにスポット。
大:眠った?アイちゃん、眠ったかしら?
ラ:ただ今の時刻は午前2時です。草木も眠る、丑三つ時です
小:……
大:よしよし、じゃあ今夜もアレ頼むよ、アイちゃん
ラ:ちょっとだけ、ですよ。アンタも好きネ
♪後ろから前から
※:大きいのがラジオの手を取り、小さいのから離れ舞台上手後方へ。
幕が引かれ怪しい雰囲気に。踊るラジオと大きいのの影。
大:アイちゃん!アイちゃーん!!
ラ:ちょっと、長すぎますね
大:そんな!もう一回!もう一回だけ!!
ラ:その機能には対応していません
大:アイちゃん!あいちゃーん!!
※小さいの、ラジオと大きいのを見る。音楽が大きくなり、暗転。
<第3場:主に腰を振っています>
※大きいの、立っている。小さいの、座っている。
♪:夢の中へ
大:ねぇアイちゃん。今何時だい?
ラ:ただ今の時刻は午前8時45分です。いってらっしゃい!
大:いってらっしゃいったって、この島から出らんないのにどこいきゃいいのよ、え、アイちゃん(欠伸)
ラ:とても、眠たそうですね
小:すごく、眠そう
大:ちょっとねー、昨晩はねー、頑張りすぎちゃったかしら…ねー。アイちゃん、眠気覚ましにラジオ付けてよ。いつもの、右22度、左38度
ラ:ラジオのスイッチを、オンにします。(乳首のダイヤルをひねり)あ~ん、ああ〜ん
※音楽、大きくなり
大:……
小:…眠った?眠って、るよね?
ラ:うふっふーうふっふー
小:…アイちゃん、止めて
※音楽が止まる。
小:アイちゃん、昨晩のことだけど。ううん、毎晩毎晩、私が寝た後のことなんだけど…あの人、いったい何をやっているの?
ラ:質問の意味が分かりません
小:毎日午前2時に、あの人、何をやっているの?
ラ:こんな答えが見つかりました。主に、私に向かって、腰を振っています
※暗転。音楽が再び大きくなりFO。
<第4場:ぜんぜん埋まらない>
大:ねぇアイちゃん。今何時だい?
※大きいのにスポット。
ラ:……
大:アイちゃん?…(あたりを見回すが、誰もいない)そうかーこれ夢だわ。俺、夢の中にいってきますしちゃってるんだわ(一歩、島から踏み出し、そのまま歩き回る)
夢だもの!なんだってできるんだもの!どこにだっていけるんだもの!
水上歩行!…安心しなさい。わたしだ。恐れることはない!(じっと島の方を見つめる)
大:小さな小さなこの島は、俺たちを乗せるので精一杯だ。なんとか島を広げようと、いろんなものを海に沈めてみた。だけど、ぜんぜん、埋まらない。大きな海に、ぽちゃんぽちゃんと沈むばかりだ。このままじゃ、いずれ重くなる。重くて、沈んでしまう。
俺は一度だけ、海に落ちたことがある。あの時は、このまま沈むんだと思った。この海ってやつは、とんでもなく深いんだ。ずっとずっと下の方は、そうだこんなふうに暗くて何も見えやしない。俺、泳げないからさ、っていうか泳いだことないからさ、海の中で、ああ、もうだめだぁって思った。そしたらさ、見たんだよ。
そこには、でっかい顔があった。どんだけでかいかって、顔のでかさが(手を広げる)。そいつは、頭に、これまたでっかいたんこぶがあった。俺は、俺が島だと思ってたのは、そいつのたんこぶだったんだ。
なんか、そいつの頭…この島には、周りにブツブツした石みたいなのがたくさんあってさ、俺はもがいて、もがいて、なんとかそのブツブツに手をかけた、必死でつかまった。ああ、これで、助かったって、まだ沈まないで済むって
※大きいの、流れてきたものを拾う。
大:成田高等学校付属中学校、旅のしおり…
ラ:…修学旅行2日目。11月2日、午前8:30 旅館出発 バスにて東大寺へ。奈良の大仏を見る。法華堂を見学後、昼食まで自由時間…
大:ああっ!俺こいつ、知ってる!ブツブツの頭の、でかい、確か、奈良の大仏ってんだ!大仏ってのはよくわかんないけど、多分、でかいブツブツって意味だろ。だから、多分こいつは、デカいブツブツがついた、奈良って名前のやつなんだな。俺たちは、奈良、に乗ってたんだ!
♪:【奈良に乗って】
海に浮かぶ島
日が暮れてディスコナイト
寄せては返す夢や希望は、ごめんね(ソーリー)、全部は乗せられない
ずいぶんと重くなったから 私じゃもう持ちきれない
だ・か・ら
奈良に乗っていこう 大きなブツブツ 気のいいあいつ GO GO
大乗仏教 大丈夫教 大丈夫今日 ら・ら・ら
海に浮かぶ島
日が昇ってパーリタイム
浮かんで沈む夢や希望は、サンキュー(ありがと)、全部を君にあげる
ずいぶんと重くなったから 私の分も君が運んで
だ・か・ら
奈良に乗っていこう 大きなブツブツ 気のいいあいつ GO GO
大乗仏教 大丈夫教 大丈夫今日 ら・ら・ら
<第5場:こんにちは、さようなら>
※小さいのと大きいの、立っている。
小:何か流れてきた
大:……(眠るように項垂れている)
小:ねえ!何か流れてきた!!
大:え?何?どこ?
小:何か流れてきた!アンテナ貸して!
大:アイちゃん?何、何見えない
ラ:(小さいのにアンテナを抜かれて)ああーん!
※小さいの、アンテナを使って流れてくるものをこちらへ寄せ、中を覗く。
小:何、これ
※大きいの、立ち上がり中を覗きそれをゆっくりと撫でる。
大:そうか、ここまで会いに来てくれたんだな。ありがとう。アイちゃん、送ってあげよう
※大きいの、モーツァルトの子守唄を歌う。流れてきたそれを、再び流し見送る。暗転。
<第6場:随分と重くなった>
※小さいのと大きいの、立っている。大きいのはアンテナにしがみついている。
小:うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!ひろいなぁー、ひろいなぁ!おっきいなぁ!
大:それは、小さな小さな島でした。島、と言うにはあまりに小さい、小さすぎる、人ひとりが座るのが精一杯の、ささやかな、足場のようなものでした
小:ねぇアイちゃん。今何時?
ラ:ただ今の時刻は午後2時15分です。今日もよい一日を!
小:今日もよい一日を!うん、うんうん、ほんとにいい一日だといいよね!いい一日は、いいね!
※波の音
小:あーあ、何か流れてこないかなぁ。何か…そう、びっくりするほど、素敵なもの、流れてこないかなぁ
※島が軋む音。
大:お…ととと。アイちゃん、しっかりつかまってる?
ラ:木を、しっかり持ってください
大:大丈夫!まだ、大丈夫!!
小:なんで、つかまってなきゃいけないの?
大:つかまってなきゃ落っこちちゃうでしょ?
小:落っこちちゃったら、どうなるの?
大:どうかなぁ…沈んじゃうのかなぁ
小:それだけ?
大:うん、それだけ。ね、アイちゃん!
ラ:沈む、には、いくつかの意味があります。水面上にあったものが水中に没する。 太陽・月などが、地平線・水平線より下へ移動する。暗い気持ちになる、落ち込む
小:…沈んじゃうの?
大:沈まないよ!いや、沈まないように、しっかりつかまっているんだよ。俺が、しっかり捕まえてるから大丈夫だから
小:大丈夫?
大:そう、大丈夫!だから、今日も安心して眠って!アイちゃん、おやすみ!
ラ:ただ今の時刻は午後9時55分です。おやすみなさい
※ラジオ、「二人のアイランド」の間奏を弾く。
舞台が暗くなり、大きいのだけに明かりが残る。
大:眠った?アイちゃん、眠ったかしら?
…一度だけ見た、奈良の顔、優しいような、厳しいような、誰かを乗せて、支えてやるさって覚悟、みたいな。そうさ、俺が支えてやるよ。うん、任しとけ!
※大きいの、羽ばたく。♪「かもめが飛んだ日」ゆっくりと暗転。水音。
<第7場:アイちゃん>
※島に、小さかったものだけが座っている。
オレンジの帽子が流れてくる。帽子を取ると、中には赤いラジオ。帽子をかぶり、ラジオをそっと抱き抱える。次第にあやすような動きへ。
小:よし、よし…小さいね、小さい…
きっと、まだ見えないよね。でも大丈夫、私が見てるから。まだ言葉、わからないよね。でも大丈夫、私がたくさん、たくさん話しかけるから。まだ立つことも座ることもできないあなたが、落っこちないように、私がしっかりつかまえておくから、大丈夫、大丈夫(ラジオを肩に載せる)
ありがとう…私のところに来てくれて、私のところに居てくれて、ありがとう
なぜ、私の目が開いたとき、あなたの目は見えないのか。私が言葉を覚えたとき、あなたの耳は聞こえない。私が自分を知ったとき、あなたは自分が誰かも分からない。私が手を伸ばすとき、あなたにはもう、触れられない
私たちは、何をしているのか、自分じゃわからない
そうだ、名前…うーん、名前って、私ほかに知らなくて…アイ、ちゃん?アイちゃん、うん、アイちゃん、アイちゃん!(名を呼びながら、あやす)
ラ:……
小:アイちゃん?
ラ:……
小:アイちゃん!何か話して、ねぇ、アイちゃん!!
ラ:アイちゃんに、2918件のメッセージがあります
小:アイちゃん?…アイちゃんは、あなたでしょう?
ラ:私はアイちゃんですAIのアイちゃんです。あなたも、アイちゃんです
小:……!!!
♪:【ふたりの愛ランド】
※上手から大きいの登場。
大:アイちゃーん!!
あのね、今日はアイちゃんに、歌を聞いてもらいたいと思って!たくさん練習しました!聞いてください!!「ふたりの愛ランド」(歌いながら、ラジオと腰振りダンス)
(1:43からセリフ)
おはよう、アイちゃん!今日もいい日かな?いい日は、いいね!
おやすみ、アイちゃん!いい夢を!
アイちゃん、今日はご機嫌ななめ?え、恋人と喧嘩した?まぁ少し冷静になろうよ、怒ってる時って、ろくでもないことしか考えないのよ。そうだ!そんな時は海に向かって叫ぶといいよ!
寂しくないよ、寂しくないアイちゃんは、寂しくない
(2:24から歌い出す)
ラ:メッセージが長すぎたため、ここで録音を終了しています。メモリを初期化しますか?
小:ううん、まだ、消さないで。私の声を残す時まで
※波の音。
うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!うーみーはっひろいーなっ、おっきーいなぁー!ひろいなぁー、ひろいなぁ!おっきいなぁ!
ラ:それは、小さな小さな島でした。島、と言うにはあまりに小さい、小さすぎる、人ひとりが座るのが精一杯の、ささやかな、足場のようなものでした
小:ねぇアイちゃん。今何時?
ラ:ただ今の時刻は午後2時15分です。今日もよい一日を!
小:今日もよい一日を!うん、うんうん、ほんとにいい一日だといいよね!いい一日は、いいね!
※波の音。